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遺産分割における不動産の評価について

2023.03.01

第1、遺産分割における不動産評価の重要性

1、遺産分割において不動産は高額な場合が多く、不動産の金額をいかに評価するのかが重要です。

2、遺産分割の方法としては、①複数の遺産を複数の相続人が現物で分ける現物分割、②遺産を処分して分ける換価分割、③特定の相続人が遺産を取得し他の相続人に金銭で精算する代償分割の3つがあります。

このうち、②換価分割の場合は、実際に売れた金額に応じて相続人で分けるため、不動産評価が問題となることは通常ありませんが、①現物分割、③代償分割の場合は、不動産評価が大事になってきます。

第2、不動産評価の算定方法

1、はじめに

不動産の金額の評価は、それぞれの場面で算定方法が異なります。今から代表的な不動産評価の算定方法についてご説明いたします。

2、固定資産税評価額

固定資産税評価額は、固定資産税を徴収するために固定資産評価基準に基づいて固定資産を評価する額です。
固定資産税評価額は、一般的に時価の7割程度と言われています。

3、相続税路線価(相続税申告評価額)

相続税で遺産評価をするために国税庁は路線価を公表しています。路線価は一般的に時価の8割程度と言われます。

4、地価公示価格

地価公示価格は、毎年1月1日時点の標準地の正常価格を3月に公示します。
公示価格は時価に近いですが、標準値と当該土地は地形などが同一ではないため、時価そのものとは言えません。

5、時価(実勢価格)

実勢価格(時価)とは、実際に市場において不動産が取引される場合の金額です。

第3、遺産分割における不動産の算定方法

1、遺産分割における不動産評価は時価評価が原則

遺産分割における不動産の評価は、実勢価格(時価)が原則となります。ただ、実勢価格(時価)といっても、金額に幅が出てきます。

不動産の金額があまり高額でない場合は、相続人全員の合意により不動産の評価について固定資産税評価額などを評価額として遺産分割をする場合もあります。

ただ、不動産の金額が高額で、固定資産税と時価とで金額差が大きい場合などは、固定資産税評価額で不動産の評価をすることに全員が同意をしない場合が多いです。このように共同相続人間で不動産の評価について争いが生じれば、不動産評価は時価で判断せざるを得なくなります。

この場合も、不動産の時価をどのように決めればいいのかが問題となります。

第4、不動産の時価(実勢価格)の評価方法

1、不動産仲介業者による査定書

不動産鑑定士による不動産鑑定は鑑定費用が高額であるため、遺産分割協議や遺産分割調停で不動産の時価を判断する際に、当初から不動産鑑定士による鑑定依頼をする場合は多くありません。

まず、地場の複数の不動産仲介業者から不動産の時価の査定をしてもらって査定書の作成をしてもらう場合が通常です。

相続人全員が、地場の不動産仲介業者の不動産の査定額を時価とすることで合意ができれば、その不動産仲介業者の査定金額を時価として遺産分割がされます。

ただ、不動産仲介業者の査定書の場合においては、依頼者からの要望を受け、実際の時価より依頼者の意向寄りの金額が出される場合もあります。

また、複数の査定書ごとに不動産の査定金額が大きく相違する場合があります。

このような場合は、不動産仲介業者の査定で不動産の時価とすることについて相続人全員の合意を得られることは難しいので、不動産の時価の判断のために不動産鑑定士による鑑定が必要になってきます。

2、不動産鑑定 

不動産鑑定士による鑑定は、不動産の専門家による鑑定評価であることから、信頼性が高いと言えます。

遺産分割調停・審判においても、不動産評価で相続人全員の合意ができない場合は、不動産鑑定士による鑑定ということになります。

ただ、不動産鑑定士の費用が高額であることが難点となりますので、不動産鑑定士による鑑定を実施するということでいいのかについては、当該不動産が高額で、不動産の評価の開きが大きく、不動産鑑定をせざるを得ない場合などに限られてきます。

遺産分割調停・審判の事案において、不動産鑑定の申し出がされて、裁判所が不動産鑑定士に不動産鑑定をさせた場合は、各相続人が法定相続分に応じて鑑定士の鑑定費用を分担するのが通常となります。

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筆者紹介

柳沢 賢二
柳沢法律事務所
弁護士

一、弁護士として、依頼者のために、一つ、一つの案件について、専門家としての①専門性の高いサービスを、②迅速に提供することを心がけています。そして、常に依頼者のために、一つ一つの案件を全力で取り組んでいきます。

二、今、高齢者社会において、相続の問題は誰もが直面する重要な問題だと思います。今までの自分の人生の集大成を納得のいく形で終えれるように、残された家族の方々が困らないように、専門家として皆様の力になれる適切な解決方法の提案やアドバイスをしていきたいと思います。

三、相続の分野でも、紛争後の裁判所での訴訟業務だけでなく、紛争を事前に防ぐ予防法務的な視点から、遺言書の作成、任意後見・成年後見の活用、事業承継のアドバイスなどにも力をいれ、皆様の力になれるアドバイスをしていきたいと思っています。

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