皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
■Q■
「相続で、兄弟間で土地を分けるために分筆登記をする必要があり、土地家屋調査士に境界確認の測量と分筆登記をお願いしているのですが、隣接地の所有者が境界確認書への署名押印に協力してくれません。どうしたらよろしいでしょうか?」
■A■
我々土地家屋調査士は日々境界立会を行っておりますが、まれに隣接地所有者様の境界確認書への協力が得られないケースがあります。通常、土地家屋調査士が資料調査・現地調査を元に境界立会を行い、正確な境界の位置が分かれば、そこに境界標を設置し図面等と共に資料を作成します。そうして出来上がるのが「境界確認書」です。
「境界確認書」の主な目的は、
●法務局に土地の分筆登記(土地を2筆以上に分ける登記)、地積更正登記(正しい地積に更正する登記)を提出する際は、署名押印された境界確認書の提出を法務局から求められるから。
土地の分筆を前提にしている土地売買であれば、署名押印された境界確認書がなければ、売買自体が直ぐに出来なくなるという事態に陥ります。
●将来的な紛争を防止するため、図面(写真も添付されるケースも多い)と共に書面にてお互いに確認したことの証拠を残すため。
ご質問の対処法としては、
①境界確認書への協力を何故拒まれているのか、今一度リサーチして平和的に境界確認が行えるような方策を探ってみることを再検討されてみる事をまずはお勧めします。経験上隣接地の所有者からよくよく話しを聞いてみると、過去の他の揉め事がきっかけだったり、勘違いだったり、詐欺の多い時代なので慎重になりすぎていたり、境界の話しと関係ない事が原因であることが多いです。第三者を介したりして、その誤解などを解いてあげると解決することも多いですし、その土地に住んでいたら、隣接地の所有者とは顔を合わせるので、まずは、平和的に解決する努力をした方がよいと思います。
②法務局に地積測量図や役所に境界が分かる資料が存在し、かつ現地に境界標等が存在する場合、境界立会・境界確認書を省略出来ることがあります。
③隣接地の所有者が境界自体は認めているが、境界確認書への署名押印だけを拒否されている場合は、分筆登記もしくは地積更正登記をその境界確認書を添付せずに、登記申請することで法務局から隣接地所有者等に境界立会の要請が入り、法務局と立ち会ってもらうことで、境界確認書が不要になります。
④筆界特定制度を利用する。
※筆界特定制度の利用に関しては、過去のレポートにも記載がございますので、ご参照ください。
筆界特定① 隣接地の所有者が境界立会してくれない時など、困った時の筆界特定制度の基礎知識
筆界特定② 隣接地の所有者が境界立会してくれない時など、困った時の筆界特定制度の基礎知識
※この時点で土地の所有権にも争いがありそうであれば、筆界特定制度利用の前に全国の土地家屋調査士会のADR境界問題相談センターや弁護士さんにも相談する。
※境界の争いには、筆界(=元々の境界線)と所有権界(=当事者間の合意や時効取得等により線が変更するもの)の争いがあり、これらを明確にしながら解決を進める必要があります。筆界特定制度では、筆界のみを特定させるものであり、所有権界については扱いませんので、注意が必要です。
私自身土地家屋調査士を何年も行っておりますと、隣地との争いで善人が損をしたケースを何度も見てきました。土地の境界は基本的には自己管理です。帰省で実家に帰った時など大切な土地を守るという意味で、ご家族で境界について話しをされることもとても大事な事と思います。
お困りの時は、お近くの土地家屋調査士にご相談されてください。